オプション取引の本源的価値と時間価値とは

オプションの価値とプレミアム

オプションを購入する際、買い手は売り手に対してプレミアムを支払います。プレミアムの額は、そのオプションの現時点での価値を表していると言えます。では、プレミアムの額はどのような要因で決定されるのでしょうか?主な要因としては次の4つが挙げられます。

1. 行使価格(ストライクプライス)
2. 原資産の市場価格(スポットプライス)
3. 満期日までの時間
4. 原資産の価格変動率(ボラティリティ)

それぞれの要因がどのように変動するかによって、プレミアムの額に影響を与えます。基本的なコール・オプション、プット・オプションの場合、下記のようにプレミアムは変動します。

また、オプションの価値を考える別のアプローチとしてオプションの価値は本源的価値と時間的価値で構成されているという考え方があります。ここではこれら2つの価値について説明します。

本源的価値

オプションの本源的価値とは、そのオプションが現時点で有している利益です。現時点の利益とは行使価格と市場価格の差額であり、行使価格が市場の価格と比べてどれだけ有利な価格になっているかを表します。ただし、オプションを行使できるのはあくまで行使日ですので現時点で有利な価格になっていたとしても、実際にそれを行使して利益を得られるかどうかは行使日にならないと分かりません。

本源的価値の計算は、コールオプションの場合は市場価格 - 行使価格、プットオプションの場合は行使価格 – 市場価格で計算されます。ただし、本源的価値は市場価格がどのような値であろうともマイナスにはなりません。何故ならば、行使価格が市場価格と比べて不利な価格となっている場合は、オプションの買い手は権利を放棄することができるからです。

オプションの本源的価値の状態によって、それぞれのオプションは下記のように呼ばれます。
ITM(インザマネー): 本源的価値がプラス
ATM(アットザマネー): 本源的価値がゼロ
OTM(アウトオブザマネー): 本源的価値がマイナス
さらに、本源的価値が大きくプラスになっている場合はディープインザマネー、大きくマイナスになっている場合はディープアウトオブザマネーと呼ばれたりすることもあります。

このように、本源的価値は今オプションが行使されたらどの程度の収益となるかを表しており、オプションのプレミアム額を決める大きな要因となっています。

時間価値

本源的価値は現時点での利益でしたが、将来期待できる利益の可能性を表したのが時間価値です。現時点でOTMのオプションであったとしても将来原資産の市場価格が変動することでオプションが価値をもたらす可能性があります。そのような可能性の価値を時間価値と呼んでいます。

時間価値は原資産の価格変動率(ボラティリティ)とオプションの満期までの期間により決定されます。オプションのボラティリティが高いということは原資産の価格が変動しやすいということなので仮に本源的価値がゼロのオプションであったとしても、将来的にオプションが価値を持つ可能性は高くなるため時間価値は上昇します。また、満期までの期間が長いということはそれだけ将来の価格変動が期待できるのでやはり時間価値は上昇します。反対に、オプションを保有すると満期までの期間は日に日に短くなっていくため時間価値は減少していきます。このことをタイムディケイと呼びます。時間価値の下落率は満期が近づけば近づくほど上昇していきます。

時間価値と投資戦略

前述の通り、タイムディケイによりオプションの価値は満期に近づくほど減少していきます。このことは、オプションに投資する上で重要な意味をもたらします。仮に将来原資産の価格が上がることを見越してコールオプションを買った場合、想定通りに原資産の価格が上昇しないとタイムディケイにより購入したオプションの価値は日に日に減少していってしまいます。そのような場合は反対売買によりポジションを解消することも検討する必要があります。

反対に、オプションの売り手にとっては同じ行使価格のオプションであっても時間が経つにつれて時間価値が減少することにより、はじめに受け取ったプレミアムよりも安い価格でオプションを買い戻すことができます。このようにタイムディケイはオプションの売り手にとっては有利に働きます。

まとめ

今回はオプションの価格を決める要因と、本源的価値・時間価値の考え方について説明しました。具体的なオプションの価格はブラックショールズ式などの複雑な数式を用いて計算されていますが、これらの価格がどのような要因で決まるかを理解することはオプション取引に投資する上で重要な意味合いを持ちますのでぜひ理解しておくようにしましょう。