米国の主要経済指標まとめ

米国の主要経済指標まとめ

米国の経済状況や金融政策は日本株式市場に大きな影響を与えます。米FRBによる金融緩和策や利上げなどが特に注目されます。米景気の回復が十分に見込まれれば、米金融緩和策の縮小や利上げが意識されます。米金融緩和策の縮小及び利上げは、米金利の上昇につながり、米ドル高を引き起こします。これにより、日米金利差の拡大に伴って円安が進行することで、日本株にはプラスの影響が働きます。加えて、米景気が回復基調にあることは、米国向け輸出の増加を介して日本企業の業績改善にもつながり、日本株へプラスとなります。一方で、金融緩和策の縮小及び利上げは米景気を失速させるリスクも秘めているため、その点には注意が必要です。その米景気の現状を知るうえで、米経済指標が読み解くことが重要になります。

米ミシガン大学消費者信頼感指数

発表日:毎月第二金曜日(速報)
ミシガン大学が実施する消費者のマインドに関する電話アンケート結果を集計したものです。1966年を100として消費者のマインドを指数化しています。速報値の対象者は300人、確報値の対象者は500人です。特徴として、米国の民間調査機関の全米産業審議会(コンファレンス・ボード)が発表する消費者信頼感指数に先行して発表されため、その速報性が重視されています。なお、コンファレンス・ボードの対象は5,000人のため、コンファレンス・ボードの消費者信頼感指数に比べて本指数のブレは大きくなっています。

米ADP雇用統計

発表日:米雇用統計公表の2営業日前(米雇用統計:毎月第一金曜日)
米企業向けの給与計算サービスを主要業務としているADP(Automatic Data Processing)社が約50万社、約2,300万人の給与計算データをもとに毎月雇用者数の動向を調査しています。2001年から全米の雇用情勢の調査を開始しており、米雇用統計の非農業部門雇用者数などが発表される2営業日前の水曜日に公表されるため、米非農業部門雇用者数の先行指標としてマーケットで注目されています。

米雇用統計

発表日:毎月第1金曜日(現地時間:8:30、日本時間:21:30(夏時間)22:30(冬時間))
米雇用統計は米労働省が毎月発表しています。内容は失業率、非農業部門雇用者数、建設業雇用者数、製造業雇用者数、小売業雇用者数、金融機関雇用者数、週労働時間、平均時給などです。その中でも失業率と非農業部門雇用者数は市場からの注目度も高く、米株式相場はもちろん、外国為替相場にも大きな影響を及ぼします。

中でも失業率などの米雇用情勢は米景気の状況を知るうえで重要な指標です。米GDPの約7割は個人消費といわれており、雇用状態が悪く、将来得られるキャッシュについて不安があれば、消費者の消費意欲は低下し、すなわちGDPの減少、米景気の悪化につながります。失業率の改善に必要な雇用者数の伸びは、非農業部門雇用者数の月間11万人程度の伸びといわれており、これが25万人を超えると大幅な失業率の改善につながるといわれています。

米消費者物価指数

発表日:毎月15日前後
消費者物価指数はCPI(Consumer Price Index)と略され、米国のインフレ率を分析するための重要な指標です。2,000項目以上の対象商品(調査対象となる米国内の5,000以上の一般消費者世帯が購入する商品とサービスを3ヶ月毎に選定)の価格の動きを指数化しています。食料品やエネルギーの価格は、季節要因の影響を受けやすく、振れ幅が非常に大きいため、物価トレンドを把握する際にはコア指数(食品・エネルギー価格除外)が重視されています。CPIは、物価の安定の責任を負うFRB(米連邦準備理事会)の金融政策に大きな影響を与えます。

米生産者物価指数

発表日:毎月15日前後の木・金曜日
生産者物価指数はPPI(Producer Price Index)と略され、米国内の製造業者の約10,000品目における販売価格から調査、算出した物価指数(1982年の平均価格を100として算出)です。なお、食料品やエネルギーの価格は、季節要因の影響を受けやすく、振れ幅が非常に大きいため、物価トレンドを把握する際にはコア指数(食品・エネルギー価格除外)が重視されています。また、製造段階別(原材料・中間財・最終財)、品目別、産業別の詳細な数値も発表されています。指数は生産者の出荷時点での価格を対象としており、消費者物価指数(CPI)に先立って発表されます。

米ISM製造業景況指数

発表日:毎月第1営業日
米国供給管理協会(ISM:Institute for Supply Management)が全米の製造業の300人以上の購買・供給管理担当役員へのアンケートを行い、その結果をもとに企業の景況感を示す経済指標を発表しています。アンケートは、生産、新規受注、在庫、価格、雇用などの項目について、前月と比較して「良い」、「変わらず」、「悪い」から選択してもらい、結果をパーセンテージで表したものです。50%が景気判断の分岐点となり、50%を上回ると製造業の景気がよく、50%を下回ると悪化していることを示しています。毎月第一営業日に前月の調査結果が発表されるため、速報性に優れています。また、特に重要な情報としては、FRBは本指数が50%を下回っているときに利上げをしたことはないということがあります。

米ISM非製造業景況指数

発表日:毎月第3営業日
米国供給管理協会(ISM:Institute for Supply Management)が全米の非製造業の300社以上の購買担当役員へアンケートを行い、その結果をもとに企業の景況感を示す経済指標を発表しています。アンケートは、新規受注、生産、雇用、入荷遅延、在庫などの項目について、前月と比較して「良い」、「変わらず」、「悪い」から選択してもらい、結果をパーセンテージで表したものです。50%が景気判断の分岐点となり、50%を上回ると製造業の景気がよく、50%を下回ると悪化していることを示します。サービス業は銀行、商店、卸売業など、GDPの側面で政府支出を除いた民間経済の約7割を占めており、ISM非製造業景況指数はその景況感について知る速報性の高い指標となります。なお、ISM非製造業景況指数は1990年代にできた指標で、1930年代にできたISM製造業景況指数と比較して歴史が浅い指標で、且つサービス業の購買担当役員は製造業の購買担当役員と比較して企業におけるポジションも高くない(製造業の仕入れは本業に直結するがサービス業(銀行など)の紙の仕入れ等は本業に直結しない)ため、ISM製造業景況指数よりも信頼性に欠けるとの見方をしている投資家もいます。

米鉱工業生産

発表日:毎月15日前後(米設備稼働率も同時に発表)
米国の製造業(耐久財:機械、輸送用機器、電気機械、非耐久財:食品、化学)、鉱業、公共事業(電気・ガス)の生産動向(月々どれくらいの物が生産されたか)を、2002年を100として指数化した指標です。具体的には医薬品やテレビ、木材、金塊なども本指数に含まれる生産物となっています。総合指数の他に、産業別、財別の数値も公表されます。なお、製造業は鉱工業生産の約75%を占めているため重要な指標として見られています。

米設備稼働率

発表日:毎月15日前後(米設備稼働率も同時に発表)
米国の製造業、鉱業、公共事業(電気・ガス)の生産能力に対する実際の生産量の比率です。2002年の平均稼働率を100として指数化した指標で、設備投資やインフレの先行指標として重視されています。見方は、80%を超えると投資が活発化し、80%を割り込むと景気後退の可能性が高まるとみられています。

S&P/ケース・シラー住宅価格指数

発表日:毎月最終火曜日(翌々月に公表)
全米の主要都市圏における一戸建て住宅の再販価格を元に、ファイサーブ社が算出し、スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)社が公表しています。2000年1月(全米住宅価格指数は2000年第1四半期)の価格を100として算出します。本指数は、1980年代にカール・ケースとロバート・シラーの二人の教授が中心となって開発され、リピート・セールス・プライシング法と呼ばれる手法によって算出されています。調査対象地域の一定期間の住宅売買事例のデータを集めた後、同じ住宅の過去の売買事例を調べ、特定の住宅ごとに「売買事例のペア」を作成して二時点間の取引価格の差を調べ、これらを一つの指数に統合するやり方です。「売買事例のペア」を作成するに当たっては、住宅が差し押さえられたケースや家族間での売買など、指数をゆがめる可能性のあるデータは慎重に除外されます。また「ペア」ごとの事例間の価格差が大きい場合(大規模な増改築等が行われた可能性がある)や、事例間の時間が長い場合(老朽化等の可能性が高い)などは、指数へのウェイトづけが低くなります。これは本指数が、純粋な住宅相場の変動を表示することを目的とするためです。住宅価格は、個人消費に大きな影響を与えるため、アメリカ国内の景気指標として重視されています。

なお、本指数は「全米住宅価格指数」、「10大都市圏指数」、「20大都市圏指数」、「大都市圏指数」と総合指数から集計都市別の数値も発表されています。「10大都市圏指数」とそれらの各大都市圏指数は、2006年5月からシカゴ・マーカンタイル取引所で先物とオプション取引が行われており、これは米国内で初めての上場不動産デリバティブとなりました。

FHFA住宅価格指数

発表日:第4火曜日又は水曜日(翌々月に公表)なお、四半期の数値は、2、5、8、11月に月次と同時
S&P/ケース・シラー住宅価格指数と並ぶ米国の代表的な住宅価格指数です。S&P/ケース・シラー住宅価格指数はサブプライムローンを通じた物件や高額物件など様々な物件を含むのに対して、FHFA住宅価格指数は信用力の高い物件で構成されています。なお、本指数は全米9つの区域、各州およびコロンビア特別区、大都市圏の数値がそれぞれ発表されています。

米小売売上高

発表日:第9営業日
米国の百貨店やスーパー等の小売・サービス業の月間売上高を、毎月、米国商務省経済分析局(BEA)が約5,000社のサンプル調査をベースに集計したものです。総合指数、変動の大きい自動車を除いた指数、また項目別では自動車、電気製品・建設資材・ガソリンスタンド・総合小売店などの前月比と実額を発表しています。個人消費がGDPの約7割を占めるなか、米国の個人消費のトレンドを知るうえで重要な指標となっています。本指標が増加傾向にあれば個人消費は堅調、減少すれば落ち込んでいると判断されます。月間の指数は天候や季節によって変動し、また速報値から改訂で大きく変動するため、月々の動きよりも3-4ヵ月程度でトレンドを把握するために利用されます。また、年末のクリスマス商戦の結果を確認する指標として、1月発表分に注目が集まります。

米消費者信頼感指数

発表日:25日~月末
非営利の民間調査機関であるコンファレンスボードが、消費者へのアンケート調査をもとに、消費者のマインドを示す指数を発表しています。アンケートは毎月5,000世帯を対象に実施され、現在の景況感・雇用状況、6ヶ月先の景況感・雇用・所得、6ヶ月以内の自動車・住宅などの購入計画の項目に対する消費者マインド(楽観もしくは悲観)の回答を集計し、指数化しています。

本指標は直接消費者へアンケートした結果をまとめたものであるため、個人消費との連動性が高くなっています。また、対象が5,000世帯であるため、米ミシガン大学消費者信頼感指数の300世帯(速報)、500世帯(確報)と比較して多く、信頼性が高くなっています。

米中古住宅販売件数

発表日:25日前後
米不動産業者協会(NAR:The National Association of Realtors)が発表する指標で、米国で発売された集合住宅を含む中古住宅のうち、所有権の移転が完了した販売件数を発表しています。米国では中古住宅市場が成熟しているため、新築住宅販売件数に比べて規模が大きくなります。住宅は高額であるため、個人の景気見通しが現れ、個人のセンチメントを図る景気の先行指標としても注目されています。また、住宅の購入は消費やリフォーム等の関連需要にもつながります。一方、新築住宅販売件数が契約書への署名ベースであるのに対し、中古住宅販売件数は所有権移転完了ベースのため、新築住宅販売件数に対して30~60日の遅行性があるといわれています。また、ローン金利の動向に影響を受けやすく、金利上昇時期には将来の金利上昇を見込んだ駆け込み需要が増加することも想定されます。

米新築住宅販売件数

発表日:毎月下旬
米国で販売された新築住宅の件数を集計したものです。対象は、一戸建てに加えてコンドミニアムと共同住宅を含みます。なお、これは土地付きの新築住宅販売であるため、保有の土地へ住宅を新築したものは含まれません。所有権の移転が完了した際にカウントする中古住宅販売件数と比較し、新築住宅販売件数は、売買契約が結ばれた時点でカウントします。新築住宅販売件数は大幅に修正されることもあるため、トレンドを捉えることが重要です。

米景気先行指数

発表日:15営業日

非営利の民間調査機関であるコンファレンスボードが発表する景気総合指数(コンポジット・インデックス)の一つで、景気総合指数として景気先行、一致指数、遅行指数を発表しています。その中でも、先行指数は労働、企業業績、株価指数、マネー・サプライなど景気に先行して動くと考えられる10項目の指標から算出したもので、景気の先行指数として、景気動向の量感を図り、転換点を見極める上で注目されています。また、景気の山に対して平均約9ヵ月、谷に対して平均約4ヶ月の先行性があるといわれています。景気先行指数として採用されている指標は以下の通りです。

①製造業週平均労働時間
②週平均失業保険申請件数
③消費財新規受注
④入荷遅延比率
⑤非国防資本財受注(設備財受注)
⑥新規住宅着工許可件数
⑦S&P500種株価
⑧マネーサプライ(M2)
⑨長期金利スプレッド
⑩消費者期待度指数

米GDP

発表日
速報値:当該四半期終了後の翌月末(1月、4月、7月、10月)発表
暫定値:当該四半期終了後の翌々月末(2月、5月、8月、11月)発表
確定値:当該四半期終了後の翌々々月末(3月、6月、9月、12月)発表

GDP(Gross Domestic Product)は、日本語では国内総生産と訳され、国内で生み出された財とサービスの付加価値の総額を示します。一国の経済規模を図る指標の一つで、GDPの伸び率が経済成長率を示す指標として用いられています。米GDPの内訳は以下の通りです。

個人消費支出

個人消費支出は個人が購入する財やサービスの総額で、GDPの約7割を占めます。サービス消費が個人支出の約6割を占めているものの、景気変動によって左右されやすいのは耐久財購入額となります。

設備投資

設備投資(非住宅投資)は構築物、機械設備、ソフトウェアに分類されます。構築物は非住居用建物、鉄道、電力施設などで、機械設備及びソフトウェアは産業機械、運輸機器、情報関連設備などです。なお、景気変動によって左右されやすいのは機械設備及びソフトウェアとなります。

住宅投資

住宅投資は言葉通り住居用建物で、景気変動によって左右されやすくなっています。

在庫投資

在庫の増減を示すもので、最近では在庫管理技術の高度化に伴って在庫の変動は小さくなっています。

財・サービスの純輸出

その名の通り財・サービスの輸出額から輸入額を引いたものを示します。米国は貿易赤字が継続しており、輸入超過(マイナス)となる状態が続いています。

政府支出

政府支出は連邦政府の国防費、非国防費、地方政府と大きく分けられます。政府系企業による経常的な支出は含まれません(投資は含まれます)。

上記のように、米GDPは米経済全体の景気動向を把握する上で重要な指標です。四半期ごとの発表のため、リアルタイム性はないものの、マーケットでの注目度は高くなっています。なお、過去の数値について大幅な修正が行われることがあるため、この点には留意が必要です。