投資用不動産取引時の重要事項説明の確認ポイント

重要事項説明とは

投資用に限らず、不動産(宅地建物)の購入は金額が多くリスクも相応にあるため、売買の判断は慎重に行う必要があります。不動産業者は買主に対して、その物件の重要事項の説明を法令で義務付けられており、かならず説明しなければいけません。今回は、区分所有でない物件の売買時に重要事項説明で明示する必要がある点と、それらの概要・意味、気をつけるポイントを説明します。

重要事項説明に記載される内容と確認ポイント

宅地建物取引業法の第35条に重要事項説明で説明すべき内容を規定しており、以下の内容となります。

1-1. 登記された権利の種類、内容

売買の対象となる物件の登記情報が記載されており、物件の基本情報が確認できます。物件の床面積、建築時期、権利の種類(所有権、借地権)を確認しておきます。

1-2. 売主の表示と占有に関する事項

売主が登記上の表記と異なるかどうかが記載されます。これらが同じかどうかを、確認しておきましょう。異なる場合は、その理由を把握しておく必要があります。また、売買契約時に占有の有無についても記載されています。これは対象となる物件が既に借主がいる場合、その契約者が表記され、いわゆるオーナーチェンジ物件の取引はこれに該当します。この場合売主が借主と締結した賃貸借契約が継承されることを確認しておきましょう。

2. 法令上の制限

売買対象の物件がどのような法令に制限されるかが記載されます。都市計画区域内か準都市計画区域内かを表す区域区分や、市町村が定める用途地域に関する内容が記載されます。

3. 私道負担有無

購入対象となる土地に私道負担部分が含まれているかが記載されます。取引対象の建物が接道条件を満たしていない場合、将来的に私道負担が必要になる場合はその旨が記載されています。私道負担が含まれている場合、その私道分には建物を建築することができませんので、注意が必要です。

4. 上下水道、電気、ガスの整備状況

飲用水(上水道)、ガス、電気、排水(下水道)の整備状況が記載されます。古い建物や郊外の建物であれば、ガスが都市ガスでなくプロパンガスが使用されていたり、下水道が整備されていなく、追加で浄化槽の設置が必要になる場合がありますので、ここで確認しておきます。

5. 工事完了時の形状、構造(未完成物件の場合)

取引対象が未完成物件の場合、工事完了時の形状・構造に関しての説明が記載されます。完成物件の売買の場合は、特に記載はありません。

6. 区分所有に関する記載事項

今回は区分所有でない建物の説明のため、割愛します。

7. 代金以外で授受される金銭

売買の代金以外で授受される金銭の内容について記載されます。例として、手付金、固定資産税の清算金などが含まれます。授受される金銭の内容として認識があっていることを確認しましょう。

8. 契約解除に関する事項

不動産売買契約を解除する場合の取り決めが記載されます。解除に関する事項の記載例としては、以下が挙げられます。

  • 手付解除 … 売主および買主は、手付金受領時から売買契約履行時までの間、手付解除と呼ばれる解除が行えることが一般的です。買主は手付金を放棄することで解除でき、売主は手付金を倍返しすることで解除できる、といった内容が定められます。
  • 引き渡し前の減失等 … 天変地異など双方の責に追わない事由が発生した場合、解除できる旨が記載されています。
  • 融資利用の特約による解除 … いわゆるローンを利用して売買契約を結んだ際に、そのローンの審査が通らなかったときに解除できると行った内容が定められます。ローンを利用して購入する際は、この解除に関する事項が記載されていることを必ず確認しましょう。
  • 瑕疵の責任による解除 … 売主は買主に対して瑕疵を追う責任がある場合、その旨が記載されます。不動産業者でない者が不動産業者から物件(宅地建物)を購入する場合、最低2年の瑕疵担保責任を追う必要があるので、必ず記載されています(新築物件だと10年)。瑕疵担保の有無と期間については確認しておきましょう。

9. 損害賠償額の予定、違約金の規定

相手方の義務違反によりどのような損害賠償を行えるかが記載されます。記載例としては、義務違反により売買契約を履行できなかった際に、違約金を売買代金の20%相当額まで請求できる、などがあります。

10. 手付金の保全措置

手付金が正常に保全されているかどうかについて記載されます。手付金の金額によって保全条件は変わりますが、手付金の金額が大きくなければ、内容に関しては確認しておく程度で良いかと思います。

11. 支払金、預かり金の保全措置

前項と類似していますが、売買契約締結時までの支払金、預り金に関する保全措置について記載されます。こちらも保全措置が行われている旨の内容が確認できれば大丈夫です。

12. ローンあっせんの場合の規定

買主にローンのあっせんを受ける場合は、その内容が記載されます。契約解除の事項に記載されたローンが承認されたなったときの規定がこちらにも記載されます。こちらも内容について認識相違ないかどうかを確認しましょう。

13. 瑕疵担保責任の履行に関する措置の概要

売主が瑕疵担保責任の履行するために、保険への加入などの措置をとっているかどうかが記載されます。新築物件の10年の瑕疵担保の場合、不動産業者は履行に対する措置が義務付けられていますので、この場合は記載されていることが確認できれば大丈夫です。

14. その他の国土交通省令・内閣府令の定める事項

上記の内容以外に、国土交通省令・内閣府令により義務付けられた内容が記載されます。ここでは全ては記載できませんが、主に確認すべき記載内容として以下が挙げられます。

  • 住宅性能評価を受けた新築住宅かどうか … 新築住宅の購入の場合は、住宅性能評価を受けていればその旨が記載されます。
  • 石綿(アスベスト)の使用調査結果有無 … あくまで調査結果なので、調査していない場合は調査結果”無”と記載されます。
  • 耐震診断を受けたかどうか … こちらも耐震診断を受けたかどうかなので、受けていない場合は”無”となります。
  • 造成宅地防災区域、土砂災害警戒区域、津波災害警戒区域内かどうか … これらの警戒区域内にしていされているかが記載されます。市町村が警戒区域を指定していない場合は未指定となります。

おわりに

今回、法令で定められている重要事項説明の内容を記載しましたが、これだけでもかなり多くの内容になります。これらの内容は不動産取引を行う上で認識しておくべき最低限必要な内容であり、これらを知るだけで十分というわけではありません。さらに、この重要事項説明も売買契約を交わす直前に説明を受けるケースがかなり見受けられます。事前に重要事項説明の交付を受けてじっくり内容を理解してから、売買判断を行い、契約手続きに進むことをおすすめします。