投資用不動産取引時の重要事項説明の確認ポイント(区分所有編)

区分所有権と重要事項説明

いわゆる分譲マンションのような、1つの建物内に独立した部位(居住区画)が存在しているとき、その独立した部位に関する所有権を区分所有権と言います。区分所有建物の場合区分所有者が共通して使用する「共有部分」と区分所有者が専用して使用する「専有部分」などに分かれるため、取引時の重要事項説明で説明するべきポイントや、気をつけるポイントは、区分所有でない場合と異なります。

前回、区分所有でない宅地建物の売買契約前に説明される重要事項説明の内容と、気をつけるポイントを説明しました。今回は区分所有建物の取引時に重要事項説明に記載される内容と気をつけるポイントを説明します。

区分所有建物の取引時の重要事項説明に記載される内容と確認ポイント

区分所有建物の取引時の重要事項説明で記載すべき内容は、宅地建物取引業法第35条に加え、区分所有等に関する法律と国土交通省令・内閣府令にて定められており、以下の内容となります。

1. 専用規約

建物または敷地の一部を特定の者だけに使用される規約があれば記載されます。例えば、一階の前庭はオーナー所有者が専用で使用する、などの記載があります。専用規約が存在するかどうかと、存在すればその内容を認識しておきましょう。

2. 専有部分の利用制限

専有部分の利用制限規約が記載されます。例えば「ペットの飼育禁止」や「ピアノなどの演奏楽器の設置禁止」などがあります。これらの内容は、入居者の住環境に大きく影響しますので、確認する必要があります。

3. 共用規約

共用部分における規約が記載されます。主に以下の内容が記載されます。

  • 共用部分の対象と共有持分の算出方法 … 共用部分の対象がどこに当たるか(共用玄関、階段、躯体など)や、共用部分の持分をどのように算定するかが記載されます。共用部分の持分は専有面積の割合によって算出されることが多いです。
  • 専用使用権に関する規約 … 共用部分でも専用使用権がある場合は、こちらに記載されます。バルコニーや部屋の外側の玄関扉、窓ガラスは共用部分に当てはまるため、それらの部分には専用使用権として記載されます。また、共用駐車場、駐輪場、倉庫などは、区分所有者以外に利用を許可する場合は、その旨が記載されます。

4. 減免規約

通常の管理費および修繕積立金を特定の対象者にのみ減免する場合、その内容が記載されます。記載例としては、分譲住宅において、未販売の住戸に対して管理費用の支払いを減免する、などがあります。減免規約が存在するとその他の区分所有者の負担が重くなりますので、内容は把握しておく必要があります。

5. 修繕記録

過去に建物の維持のための修繕記録の有無と、有りの場合その内容が記載されます。修繕記録は建物の管理状況を見るための判断材料となりますので、古い建物であれば特に重要です。チェックする観点としては、修繕内容が長期修繕計画と照らし合わせて、予定していた修繕なのか、突発的な修繕なのかを確認し、計画通りの修繕を行えているか、などがあります。

6. 管理委託の内容・金額

管理会社に管理を委託している場合、委託先の企業についての情報と、委託内容、金額が記載されます。マンションに限らずすべての建物で言えることですが、建物の管理が建物価値を維持する上で非常に重要なポイントなりますので、管理会社を確認することは大切です。残念ながら管理会社の良し悪しというのは一般の不動産投資家から見ると判断がつきづらいですが、ネットなどで管理会社の評判などに関して情報収集しておきましょう。また管理費用の金額についても記載されています。この金額内の予算で収まっているかどうかは、過去の決算報告書を確認すればわかりますので、合わせて取引前に確認しておくと良いでしょう。

7. 修繕積立金

長期修計画に基づいた修繕積立金の徴収額が記載されます。修繕積立金は、長期修繕計画を見て、それに十分かどうかを確認すると良いです。新築ワンルームマンションなど、直近の理利回りを良くするために修繕積立金を低く設定している場合があるので、注意が必要です。また、5年後、10年後に修繕積立金を増やすという設定をする場合もありますので、合わせて長期修繕計画を確認しておきましょう。

おわりに

今回は区分所有の建物の取引時に記載される重要事項について説明しました。区分所有のほうが記載内容が多く、抑える必要があるポイントも増えますが、不動産投資の一歩目としては区分所有を扱うことも多いかと思います。ですので内容についてしっかり理解したうえで取引に臨みましょう。