イールドカーブの基礎知識

イールドカーブとは

通常、金利は債券の種類や残存年数によって異なります。例えば残存年数が10年の国債と同じく残存年数が10年の社債であれば、企業に比べて国の方が信用力が高いためその分国債の方が利回りは低くなります。また、同じ国債でも残存年数が10年のものと、残存年数が5年のものでは利回りは異なります。そこで、同一種類の債券について横軸に残存年数、縦軸に利回りをとって描かれる曲線のことをイールドカーブ(利回り曲線)と呼びます。イールドカーブの形状が右肩上がりとなっていて残存年数が長いほど利回りが高くなっているものを順イールド、反対にイールドカーブの形状が右肩下がりとなっていて残存年数が長いほど利回りが低くなっているものを逆イールドと呼んで大きく2つに分類することができます。

イールドカーブの形状

イールドカーブの形状については大きく順イールドと逆イールドの2種類が存在することを紹介しました。では、どのような要因でイールドカーブの形状は決まるのでしょうか?その形状を説明する様々な理論があります。ここでは代表的な3つの仮説を紹介します。

純粋期待仮説

債券をある一定の期間運用しようとした場合に、その期間と同一の残存年数の債券を保有して運用する方法と、短期の債券を繰り返し購入して運用する方法で得られる利益の期待値は等しいとする考え方です。これは言い換えると長期金利というのはその期間の短期金利の予想値を反映しているという考え方です。具体例を挙げて説明します。例えば残存年数1年の債券の金利が1%で、1年後にはこの金利が2%に上昇すると市場参加者が予想していたとします。このとき、金利1%の残存1年の債券を購入した後1年後に再度残存1年の債券を購入したとします。金利が当初の予想通り2%に上昇したとすると、この2年間の運用の利回りはざっくり1.5%となります。一方で、残存2年の債券の利回りが仮に1.3%だったとすると短期の債券を繰り返し運用するほうが利回りが良いということになりますので、残存2年の債券の利回りは1.5%に近づいていくというのがこの仮説が述べていることです。つまり、この仮説のもとで順イールドの場合は市場が将来の短期金利が上昇することを予想しており、逆イールドの場合は下落を予想していることを示しています。

流動性プレミアム仮説

流動性プレミアム仮説は、短期の債券よりも長期の債券のほうが金利の変動リスクが大きいため、そのリスク分プレミアムが長期の債券には乗っており利回りが高くなるという仮説です。この金利変動リスクに対するプレミアムのことを流動性プレミアムと呼びます。投資家は期待収益率が同じであればリスクの大きい債券よりリスクの小さい債券を選びます。リスクが大きい債券はその分プレミアムを乗せないと投資家が購入しないため利回りが高くなる傾向があります。ただし、この仮説のもとでは順イールドは説明できますが逆イールドを説明することができません。したがって、実際の短期金利と長期金利の差はこの流動性プレミアム仮説と純粋期待仮説の複合として考えることが一般的となっています。

市場分断仮説

市場分断仮説とは、投資家は様々な理由により特定の満期を持つ債券を好んで選ぶ傾向があり、その結果各期間の金利はそれぞれ独立に決定されているという仮説です。このような分断は、短・中期の債券に投資する投資家(地銀など)と長期の債券に投資する投資家(生命保険会社や信託銀行等)が分かれており、決められた期間の債券にしか投資しない投資家もいるということが要因の1つとして挙げられます。この仮説のもとでは短中期の市場と長期の市場は分断されており異なる期間の債券間での裁定が行われません。この仮説を前提とすると順イールドは短期の債券に投資をしたい投資家が多く、長期の債券に投資したい投資家が少ない状態と考えられます。取引が活発で市場の流動性が十分にあるマーケットにおいては市場分断仮説は当てはまらない部分も多いと思われますが、流動性が低いマーケットにおいては一定の妥当性があると考えられています。

終わりに

今回は残存年数の違いによる利回りの違いを表すイールドカーブについて説明しました。現在のイールドカーブの形状を分析することで、マーケット参加者がの動向を予測することができます。債券に投資をする際の一つの指標になりますのでぜひ覚えておきましょう。