エクイティ・ストーリーの考え方。公募増資と株価の関係

エクイティ・ストーリーの考え方

エクイティ・ストーリーとは?

エクイティ・ストーリーとは、会社の投資魅力を投資家に対して整理して伝えるものです。投資家の目線に合わせ、会社の特徴・強みや今後の成長戦略を説明します。

投資家は公開されている情報から、会社を理解し、投資を行うかを決定します。会社と投資家の間には情報の非対称性があることから、全ての情報を得られるわけではなく、また必ずしも情報から正確に理解することが出来るわけではないことから、実像と投資家の理解にはギャップが生じることがあります。エクイティ・ストーリーとは、投資魅力を投資家に説明するもので、入念に策定されたエクイティ・ストーリーによってこのギャップを埋めることが可能になります。

特にエクイティ・ストーリーは将来の株価を決める期待値になるため、個人投資家、機関投資家双方が納得し、夢を抱けるようなものであればあるほど将来への期待値が高まり、結果として株価の上昇につながります。

エクイティ・ストーリーで伝えること

投資家に正確に理解してもらうためには、何をしている会社であるか、また今後どのように成長していくのかを説明する必要があります。そのため、下記の4つのポイントを抑えたエクイティ・ストーリーを作り上げることがポイントです。

  1. 事業内容:何をしている会社か
  2. セクター環境:どんなセクターに属しているのか
  3. 強み:どこが同業他社と違うのか
  4. 成長戦略:今後どうやって成長していくのか

投資家から評価されるエクイティ・ストーリーのポイント

投資家の投資判断に大きく影響するポイントは、独自性、成長性、収益性の3点です。スピーディーな利益成長や事業のスケーラビリティを示しつつ、想定されるダウンサイドリスクへの懸念を払しょくするための説明を行っていくことが求められます。

独自性

日本の株式市場には約3,400社が上場、IPO社数も年間80社程度あり、銘柄としてオリジナリティを訴求することが重要です。独自性を訴求し、投資家に興味を抱いて貰うことがスタートです。端的で分かり易いこと、大きなトレンドに則ったストーリーがあること、IPO時の時流に乗ったキーワード設定等を考慮します。

成長性

特に、IPO銘柄においては、高い成長性が期待されます。市場規模は十分な大きさがあるか、当該会社は業績拡大局面にあるか、成長性を定量的に説明できるか等が問われます。この際、営業利益、純利益に加えて、EPSベースでも成長性を説明をできることが望ましいと考えられます。

収益性

高い独自性により超過収益力が生まれ、その証左として収益性の高さを示せると、更に銘柄としての魅力が高まります。営業利益率、純利益率といった利益率の説明に加えて、1人当たり売上高や同営業利益等、生産性の高さも訴求したい指標です。又、ROEやROAといった指標についても説明できれば、投資家とのコミュニケーション上はより理想的と言えます。

エクイティ・ストーリーと中期経営計画

中期経営計画は「読み手」である投資家に理解しやすい計画であることが重要です。経営環境、成長戦略は、業績(利益)見通しを合理的に説明するという観点から整理する必要があります。

中期経営計画とは、企業が目指す「ビジョン(ゴール)」までの「中間目標(ターゲット)」です。このため、「ビジョン」との関連性が重要です。企業価値(株価算定)は「利益の成長(性)」により行われます。そのため、利益の増減が合理的に説明できる計画策定が必要です。

中期経営計画に盛り込むべきポイント

中期経営計画に不可欠な要素は以下の通りです。

  • ビジョン/経営理念/経営方針:会社が目指す最終ゴール。中計の先にあるもの、中計策定の背景を記載します。
  • 経営環境:社会、制度、ニーズの変化を整理し、市場の成長性を示す客観データの収集します。
  • 成長戦略:重点分野の明確化を行い、KPIの設定と達成のための具体的な施策を作ります。
  • 数値目標(業績見通し):成長ドライバや利益(費用)増減の理由が合理的に説明できる業績予想の組み立て、投資計画と資金繰りのチェックをします。

エクイティ・ストーリーと公募増資・株価の関係

エクイティ・ストーリーにより、公募増資による新株発行時の株価推移が変わります。公募増資を行うと、発行済み株式総数が増加するため、時価総額が公募増資前後で変わらなければ、1株あたりの価値、すなわち株価はその分下落してしまうことになります。

公募増資後の株価推移を決めるのはエクイティ・ストーリー

その株価の下落を抑えたり、逆に上昇させることができるのがエクイティ・ストーリーの力です。エクイティ・ストーリーとは、調達した資金でいかに企業価値(時価総額)を上げるかを投資家に説明するためのものです。調達した資金を使って発行済み株式数が増えた分以上に利益を上げられる期待があれば、株価は公募増資によって上昇することも理論的にはあり得るのです。