シェアリングエコノミーの事例と課題

シェアリングエコノミーとは

シェアリングエコノミーとは厳密な用語の定義はありませんが、一般的には個人to個人(P2P)を対象として、個人がもつ有形資産や空き時間などの無形資産を活用して、他の個人へ提供する経済活動を指します。近年、インターネットやスマートフォンの普及により、シェアリングエコノミーに関連するサービスが増えています。矢野経済研究所では、2020年にはシェアリングエコノミーの市場規模は約1100億円を超えると予測されています

シェアリングエコノミーが流行する背景

シェアリングエコノミーに関連するサービス(以下、シェアリングサービスと呼びます)は年々増加しており、新規シェアリングサービス数を以下のように発表しています。

このようなサービスの増加の背景として、以下の点が挙げられます。

モノの所有から利用への変化

近年、マイカー所有率が減少に代表されるような、消費者はモノを「所有す」ることにあまり大きな価値を感じない傾向にあり、必要なときだけ「利用」することが重視されている傾向があります。

インターネット・スマートフォンとそれを基にするサービスの普及

総務省では、2016年時点で世帯あたりのモバイル端末所有率は94%を超えると発表されており、各家庭にモバイル端末、インターネットが普及しており、またそれを基にしたウェブサービスの認知率が向上しています。特に若年層ではメルカリなどを代表とする個人間取引サービスに利用が多くなり、個人間の取引を前提とするシェアリングサービスに対して利用抵抗が少なくなり、普及を後押ししたと考えられます。

シェアリングエコノミーの利点

シェアリングエコノミー及びシェアリングサービスの代表的な利点は以下が挙げられます。

低コスト、低マッチングフィー

もともと遊休資産を活用しているため、基本的にその提供価格はその他事業者運営のサービスより安く設定される事が多いです。また、従来の人材リソースを提供する派遣会社、マッチング会社などは、仲介マッチング業者を複数介するところも多く、その分仲介フィーが発生し、サービスの購入者は高い金額で買う必要があり、サービス提供者は低い収入しか得ることができないということがあります。シェアリングサービスを使用することでマッチングフィーの発生を高々1箇所となり、通常5%~15%程度のマッチングフィーに抑えることができます。

新たな働き方、収入源の増加

自らのスキルや遊休資産を活用することで、収入を増加させ、サイドビジネスやネットワークを広げることが期待されます。例えば、収入を増加させたい保育士が、自分の空き時間をベビーシッターとしてフリーランス活動を行うことによって、収入を増やす機会を提供できる、などがあります。

シェアリングエコノミーの事例

日本で主に利用されている代表的なシェアリングエコノミー(シェアリングサービス)を以下に示します。

Airbnb(空間のシェアリング)

シェアリングエコノミーの認知を加速させた代表的なサービスで、自宅を宿泊用として貸し出し、宿泊者をマッチングするサービスで、民泊と呼ばれています。
日本では外国からのインバウンド観光客を呼び寄せたいがホテルなどの宿泊施設が不足しているという問題があり、その解消策として注目されました。しかし後述する既存の旅館業法などの法整備に適合しない部分があり、グレーゾーンなサービス運営者が増えたという課題もあります。

Uber Eats(配達のシェアリング)

レストランの宅配サービスで、配送してくれる人をマッチングします。宅配を希望する人がオーダーをすると、レストラン側が準備し、食事を運んでくれる人をマッチングします。これにより、レストラン側は配達者を固定で雇うことなく、宅配サービスを始めることが可能になります。

シュフティ(スキル、空きリソースのシェアリング)

主婦向けの空き時間を活用した在宅ワークのマッチングサービスになります。ライティングや翻訳などの事務作業を遊休時間を活用して依頼/受注することができます。

ジモティー(モノのシェアリング)

不要なものを誰かに販売/譲渡するためのマッチングサービスです。ヤフーオークションなど、個人間ののモノの販売サービスは昔からありましたが、ジモティーでは0円販売が可能であり、捨てるのがもったいない、面倒という場合に近くに住んでいる人に譲渡できるという、地域性に特化したやりとりがあることが特徴的です。

シェアリングエコノミーの課題

シェアリングエコノミー及びシェアリングサービスの問題点を以下が挙げられます。

トラブル時に当事者間の負荷が大きい

マッチングサービスなので、事業者側はある程度のルールは制定するものの、トラブル時には当事者間でまず交渉することが必要となります。このトラブル時のリスクの懸念がサービス利用者では一番高くなっています。この点に対してサービス事業察は以下のような対策を行っているが多くます。

  • 双方の本人確認 … サービス利用者の身元を明らかにするために、免許証などの本人確認書類の提出・認証を義務付けて対策しています。
  • 相互レビューによる信頼情報の蓄積 … サービス利用察は互いに相互レビューを設けることによって、その利用差がどの程度良い評価をもらっているか公開します。多くのサービスでは、評価の蓄積が価格に直結するため、悪い評価をもらわないためにトラブルを起こさない抑止力として働きます。

法律の整備が不明瞭

上述の民泊のように、個人間取引は現状の法整備が追いついていない場合があり、グレーゾーンなサービス事業差が増えるという問題があります。米国で広がっているライドシェアサービスのUberは、日本でタクシー事業を開始するためには道路運送法に基づく許可が必要となり、日本ではあまり広がっていません。

ITリテラシーが少なからなず必要(デジタルデバイドの広がり)

シェアリングサービスは、ITサービスを前提としているため、モバイル端末を持っていなければならず、相手とのコミュニケーションや評価をインターネット上で行う必要があります。これができない人たちには、利用が促進されないという欠点があります。