オプション取引における取引戦略

取引戦略とは

オプション取引の基本形はコールオプション、プットオプションですが、行使価格や売り買いの異なる複数のオプションを組み合わせることによって様々な戦略を考えることができます。そのような組み合わせにより単純に原資産の価格が上がるか下がるかというような戦略だけではなく、「A社の株は110円までは上がるが120円までは上がらないだろう」、「USD/JPYの為替レートはしばらく大きく変動はしないだろ」等といった様々な相場観に基づく戦略に対応することができます。また、今保有している株が下がったときにその損失を減らす戦略や、オプションの損失額を限定的にするといったリスクを抑えるための戦略もあります。ここでは代表的な組み合わせによる戦略をご紹介します。

様々な取引戦略

カバードコール

カバードコールは原資産となる証券を保有している場合で、原資産の価格が上昇しなかった場合のリスクを軽減するための戦略です。以下のような取引の組み合わせにより実行されます。

  • 原資産の買い
  • コールオプションの売り

この戦略は今後保有している原資産の価格が上昇しないと予想した場合に行います。実際に価格が上昇しなかった場合には、売却したコールオプションのプレミアムで原資産価格の下落を補填することができます。反対に原資産価格が売却したコールオプションの行使価格を上回った場合は、保有している原資産をそのまま渡せば良いことになります。つまり、カバードコールは将来の原資産価格が値上がりした場合の利益を失う代わりに、原資産価格が値下がりした場合の損失を抑える戦略です。ただし、原資産価格の値下がり幅がコールオプションのプレミアム価格を超えてしまった場合は全体として損失が出てしまうので注意が必要です。

プロテクティブプット

カバードコールは原資産を保有している場合にその価格変動のリスクを抑えるための戦略でしたが、原資産価格が上昇した場合に原資産を手放す必要がありました。原資産を売却することなく価格低下のリスクを抑えるとともに、価格上昇の時にはその利益も取りたい場合の戦略としてプロテクティブプットが挙げられます。以下の取引の組み合わせで表現されます。

  • 原資産の買い
  • プットオプションの買い

原資産価格が低下した場合、購入したプットオプションの行使することで利益を得られるため原資産価格の低下の損失を限定することができます。反対に原資産価格が上昇した場合、原資産価格の値上がり益から支払ったプットオプションのプレミアムを控除した分の利益を確保できます。このようにプロテクティブプットは原資産価格の値上がりの利益の一部を代償にして損失を限定することができる戦略です。

バタフライ

バタフライは少し複雑な取引です。以下のような行使価格が異なる3つのオプションの組み合わせで表現されます。

  • 低い行使価格のコールオプションの買い(1単位)
  • 高い行使価格のコールオプションの買い(1単位)
  • 上記の中間値の行使価格のコールオプションの売り(2単位)

このような取引の組み合わせをロングバタフライスプレッドと呼びます。この戦略をとった場合の損益のグラフは下記のようになります。

損益のグラフを見るとオプションの行使日に原資産価格が中間の行使価格近辺であれば収益を生みますが、原資産価格が大きく変動すると少額の損失が発生することがわかります。これは相場が大きく変動しないと予想した場合に有効な戦略と言えます。反対に、行使価格の異なる3つのプットオプションを組み合わせて以下のような取引を行うこともできます。

こちらはショートバタフライスプレッドと呼ばれる取引で、中間の行使価格の場合に損失が最も大きく、反対に価格が大きく上昇または下落した場合に収益を得られる戦略です。このようにバタフライは相場が上がるか下がるかではなく、大きく変動するかしないかを予想して行う戦略となります。

おわりに

今回ご紹介した戦略はごく一部ですが、複数のオプションを組み合わせることで様々な取引戦略が取れることを説明しました。現物の取引と異なり組み合わせによって個々人の様々なリスク志向に対応できることがオプション取引のメリットの一つです。