様々なデリバティブ取引

デリバティブ取引とは

デリバティブ取引とは、伝統的な金融商品である債券や株式の価値や、日経平均、株価指数といったレファレンスレートから派生した取引や証券のことをいいます。元になっている金融商品や指数のことを原資産と呼びます。この原資産から派生(Derive)したものといった意味から、日本語では金融派生商品とも呼ばれます。原資産の種類やその派生の方法によって様々な取引を作ることができます。マーケットで取引されるデリバティブには取引所取引(リステッド)と相対取引(OTC:Over The Counter)の2つの形態が存在します。前者は決められた取引条件のもとで、価格優先・時間優先等の取引所のルールに基づき取引が成立していきます。取引条件が定められているため流動性が高く、取引相手の信用リスクを考えなくて良いというメリットがありますが、取引の自由度が小さいというデメリットがあります。一方で相対取引の場合は、買い手と売り手が双方で自由に取引の条件を定めることが可能というメリットがありますが、取引所を通さないため取引相手の信用リスクについて良く考える必要があります。

様々なデリバティブ取引

前節で説明した通り、デリバティブ取引は原資産やその派生の方法によって多種多様な取引が存在します。ここではその代表的な取引を紹介します。

先物取引

先物取引とは、将来の定められた期日(清算日)に定められた価格で特定の商品を買う(または売る)ことを定める取引です。原資産となっている商品の種類により、様々な先物取引が存在します。

  • 為替先物
    為替リスクを回避するために将来の為替レートを現時で確定させる取引です。特定の外国通貨を、将来の一定の時期に一定の価格で受け渡すことを、現時点において決める取引をいいます。
  • 債券先物
    特定の債権を将来の特定の日にあらかじめ決められた価格で売買することを約束する取引です。実際に実存する債権が先物取引の対象になっているわけではなく、償還期限や金利を標準化した標準物を想定して売買が行われます。日本では国債の標準物が東京証券取引所に上場されています。
  • 商品先物
    農産物、貴金属、工業品、繊維といった物が原資産となり、将来の一定時期に一定の価格で受け渡しを約束する取引です。実際に物を受け渡すのではなく、すでに行った取引と反対の売買をその時の市場価格で行うことによって売りと買いを相殺させて物の受け渡しを行わない差金決済を行うこともできます。

オプション取引

先物取引はあらかじめ決められた期日・価格で取引を必ず行う必要がありましたが、オプション取引は決められた期日・価格で取引を行う権利を売買する取引です。オプションの買い手は将来時点で自分にとって有利な市場環境であれば権利を行使し、そうでなければ権利を放棄することができます。この権利の対価として取引開始時に売り手に対してプレミアムを支払う必要があります。オプション取引も先物取引と同様に原資産の種類によって通貨オプションや債券先物オプション、株価指数オプション等様々な種類があります。また、権利行使のタイミングによって以下のような分類をすることができます。

  • ヨーロピアンオプション
    契約当初にあらかじめ設定された将来の唯一の期日にのみ権利を行使することが可能なオプション。
  • アメリカンオプション
    将来の一定期間(オプション期間)中であればいつでも権利を行使することが可能なオプション。
  • バミューダオプション
    オプション期間中に複数の期日を設定して、その期日のいずれかのタイミングにおいて権利を行使することが可能なオプション。ヨーロピアンオプションとアメリカンオプションの中間的な位置づけのオプションであるため、地理上ヨーロッパとアメリカのほぼ中間に位置するバミューダ諸島と掛けてこのような呼ばれ方をされるようになったと言われます。

スワップ取引

スワップ取引とはその名の通り、異なるキャッシュフローを交換する取引です。取引の開始時点では、交換するキャッシュフローの価値は同一であるという特徴があります。例えば、金融機関から変動金利で借り入れを行っている場合に、将来の金利上昇リスクをヘッジするため固定金利と交換するスワップ取引を組むことで調達コストの上昇リスクを抑えるといった利用方法があります。交換するキャッシュフローの種類によって様々な種類があります。

  • 金利スワップ
    二者間で一定の期間、固定金利と変動金利や変動金利と異種の変動金利を交換する取引です。金利スワップでは、金利の元となる元本は実際にやり取りされないので、想定元本と呼ばれてスワップ取引の大きさを示します。
  • 通貨スワップ
    通貨スワップは異なる通貨間のキャッシュフローを交換する取引です。主に資金調達コストの削減もしくは確定と為替リスクヘッジのために行われます。
  • クレジットデフォルトスワップ
    信用リスクのヘッジを行いたい取引側が、決められた保証料を取引相手に支払うことで支払不履行等のあらかじめ決められたクレジットイベントが発生した際に保証料を支払った買い手が損失額相当額を受け取ることができる取引です。

その他のデリバティブ取引

前述の代表的なデリバティブ取引以外にも、例えば原油や石炭、天然ガス等を原資産とするエネルギーデリバティブや、不動産の価格やリターンを原資産とする不動産デリバティブ、さらには一定の期間に雨の日が何日あるか?といった天候を原資産とした天候デリバティブ等、多種多様なデリバティブが存在します。